〜思い出せ! あの日の感動〜
ーーあらすじ
ある日の朝、ドラえもんの怒号が響き渡りました。
「起きろ〜‼︎ 何時だと思ってんだ‼︎」
のび太に対して起床時間を告げるドラえもんの怒号が家全体に響き渡り、画面自体も揺れるという粋な演出。
慌てふためくのび太ですが、一旦冷静になり、「そうだ、学校を休もう」と登校拒否を堂々アピール。
さらに「今の教育制度は僕には向いていないんだ。」と言いのけ、退学も辞さない態度を強調しました。
のび太は早速机につき、退学届を書きました。
しかしドラえもんがそれを制止、それに続いてのび太のママが2階の物音にうんざりし、2人を注意します。
ドラえもんはのび太の退学の意思をママに伝えますが、今日は日曜日(休日)ということもあってか、ママは「いいじゃない。今日は日曜日なんだから」とぶっちゃけていました。
ドラえもんはのび太に謝罪し、ママに言われた通りに朝食をとりますが、なぜかご機嫌斜めののび太ママ。
ドラえもんは窓越しにママとパパが一切口を利かないシーンを見ており、2人がしばらく喧嘩していることを思い出しました。
2人のほとぼりが冷めるまでドラえもんとのび太はしばらく外を散歩しますが、のび太は気だるそうに同じことを繰り返してばかりの惰性で送る毎日に辛気臭い顔を浮かべていました。
なんと静香ちゃんの家に遊びにいくというドラえもんの提案までしぶるほど精神的に支障をきたしていました。
「マンネリ…ワンパターン…。」
そうぶつぶつ言いながら、のび太は当てもなく歩き続けます。
ことを重くみたドラえもんは秘密道具の1つ『はじめてポン』を出して静香ちゃんのもとに半ば強引にのび太と一緒に遊びにいくことになります。
静香ちゃんの家に到着し、のび太はどんよりした気持ちを引きずっていましたが、そのタイミングでドラえもんはのび太の背中に道具のスタンプをくっつけます。
すると静香ちゃんを見たのび太はまるで初恋をしたかのようにハート(心)を射抜かれ、メロメロ状態に。
あまりにオーバーな反応だったので、静香ちゃんは少し戸惑っていました。
その後トランプや漫画などを楽しみ、あらゆる遊びや芸事にも新鮮なリアクションをとるのび太に対してしずかちゃんは「いつもやってるじゃない。」と返していました。
有り合わせで作った静香ちゃんママの手作り料理にも感動を覚え、ついには夕日の輝きにも目をキラキラさせてしまう始末でした。
静香ちゃんはそんな童心に蘇るのび太を見て、
「私、のび太さんが羨ましいわ…。小さい子供みたいに何にでも興味を持って夢中になれるなんて…。」
と胸の内を明かしていました。
その後帰宅するのび太とドラえもんでしたが、野球の試合を忘れていたのび太に対し、ジャイアンとスネ夫が2人で通せんぼをしていました。
しかしそんな2人を見てものび太はエモいわれぬ感動を覚え、2人の顔貌に虜になってしまいます。
あまりにシュールなのでのび太のセリフを抜粋しますね。
ジャイアンに対して
「そのつぶらな瞳…。たくましい身体!」
スネ夫に対して
「シャープな口先…。斬新なヘアスタイル!」
このように2人を絶賛するのび太を「気持ち悪いな。」と言ってしまうジャイアンでしたが、ドラえもんはジャイアンスネ夫にもスタンプをつけ、すっかり3人はフレンドリーになってしまいます。
その道中、小便をしている野良犬がいましたが、そんな犬にも3人は興味を大いに示し、毛がフサフサなことや尻尾振りの動作にすっかり視線が釘付けになってしまいます。
しかしその後ついにスタンプの効果が切れ、のび太はハッと我に帰りました。
ジャイアンたちと抱き合っていた記憶は残っているようで、ホモに目覚めなくてよかったと、意味深な発言をしていました。
2人は家に着きましたが、ママとパパの喧嘩の声が聞こえるので戸惑います。
ドラえもんとのび太は襖の内側からこっそり覗き、ドラえもんはママにパパにスタンプをつけることを決めます。
ママとパパはヒートアップし、ついにそっぽを向いてしまいます。
2人は少し冷静になり、お互いに「昔のほうが優しかった」などと、過去を美化し始めました。
そのタイミングでドラえもんは2人の背中にスタンプをつけ、2人は突然振り向き、さっきの喧嘩がウソだと思えるほど2人は惹かれ合い、焦がれました。
まさに新婚ほやほやよろしく2人は手を取り合い、お互いのことを絶賛。
そのシーンを後ろで見ていたドラえもんとのび太は少し照れた表情を浮かべていました。
その後、ドラえもんはのび太に対し、明日の登校日にはスタンプをつけることを勧めますが、のび太は一切応じることなく布団につき眠りました。
ドラえもんは押入れからのび太の様子(寝顔)を複雑な表情を浮かべつつ見つめていました。
のび太は途中、目が覚め、「初めは新鮮な感動があったんだな。」と物思いにふけり始めました。
さらに自分が学校に入学したときのことを思い浮かべましたが、どうしても曖昧な記憶ばかり。
そして真実をこの目で確認するため、タイムマシンで当時の時代に行きました。
タイミマシンを降り、窓から漏れる一筋の光からそっと覗き込むのび太。
そこには学校に入学前ののび太がはしゃいでおり、初めての学校生活にワクワクする様子が描かれていました。
新しい友達や先生、あらゆる新天地での出来事に期待を膨らませていた当時ののび太に対し、窓から覗いていたのび太は少し笑みを浮かべていました。
当時ののび太のママとパパはのび太を産んだ日からあっという間の出来事だったと振り返り、その様子にのび太は「あのときは学校に行くのが楽しかったっけ。いつから…こうなっちゃったんだろう…。」と昔と今の気持ちのギャップに沈んでいました。
翌朝、いつも通りドラえもんが寝坊しているであろうのび太に怒号を発しますが、すでにのび太は起きており、何やら腕を組んで思い詰めている様子でした。
そしてドラえもんは昨日のスタンプをのび太につけようとしますが、のび太はそれを拒みます。
いつもの病気が始まったと思い、ドラえもんはパパとママにメンヘラ気味ののび太の説得を試みますが、2人は「いつものことでしょ。」と一向に取り合ってくれません。
埒があかず、ドラえもんは2人に例のスタンプを背中に押し当て、2人を必死に説得します。
その後、部屋を飛び出したドラえもんと階段を降りてきたのび太が接触。
ランドセルを背負うのび太を見てドラえもんは戸惑いますが、のび太は学校に行くと言い、ドラえもんは感動のあまりに泣いてしまいます。
スタンプの効果持続中のママとパパはのび太を追っかけてまで見送り、ドラえもんはその様子を少し呆れ顔で見守っていました。
おしまい。
ーー3話感想
ドラえもんのエピソードの中では個人的にかなり感動しました。
ほとんどのエピソードではのび太のドジや甘えん坊の性格に振り回されるドラえもんですが、今回はドラえもんの手を借りずに自力で学校に行くという強い意志を見せました。
最後のシーンではスタンプをつけられたママとパパの2人はともかく、ドラえもんが手放しでのび太の内面の成長を喜ぶという、2005年版アニメにおいては非常に貴重なシーンと言えるでしょう。
大山のぶ代さんのドラえもんではその手のエピソードが意外と多くありましたが、声優リニューアル後はのび太の内面の成長が描かれることが少なくなっており、こういうエピソードはなんだか嬉しいですね。
また、のび太が過去の時代に遡り、昔の自分と今の自分の姿を重ねるシーン。
現実的な思考ばかりになり、当時の新鮮な感動やリアクションを忘れていたのび太にとって、昔の自分の姿は童心を思い出させてくれる良い機会になったのでしょうね。
なんだか僕もほっこりしてしまいました(笑)。
このエピソードにはないですが、いつぞやのドラえもんが言っていた
「大人ってかわいそうだね。自分より大きいものがいないもの。よりかかって甘えたり、しかってくれる人がいないんだもの。」
の台詞がチラついてしまい、大人に成長することによって得られる感動やリアクションの総和は徐々に減ってしまう切なさを改めて感じました。
今回のエピソードはそういう意味で、つい前に成人した僕にとっても幼年期の自分を思い出させてくれる良いエピソードでした。
では次回お会いしましょう。