〜男はつらいよ〜
ーーあらすじ
寅さん(渥美清)が故郷・紫又に帰ってきた。
お寺の前で賑わう庚申祭にまみれて寅さんは旗揚げをして人々の注目のマトとなる。
父親、車平造のせがれ、寅次郎。
庭先に入ってはトンボ取りして御前様の折檻を受けていた寅さん。
寅さんはその祭りの最中、おばちゃん(三崎千恵子)と久方ぶりの再会を果たした。
さらにおいちゃん(森川信)とも再会し、家で歓迎パーティを開いた。
寅さんの妹さくら(倍賞千恵子)は寅さん不在の間オリエンタル電気の会社に勤める電子計算処理を行うキーパンチャーになっていた。
寅さんは故郷帰り、アタッシュケースに入った金箔の腕時計をおばちゃんにプレゼントする。
血行促進の効果があるようで、そこらへんの高級腕時計より値打ちがあると説明。
そこにさくらが帰ってきたが、寅さんのことを思い出せずに拒否反応を示す。
しかしすぐに思い出したようで、さくらは感動のあまり泣いてしまう。
翌日、さくらは取引先の社長の息子との縁談に1人で向かうことにしたが、両親揃ってのお見合いなので二日酔いで倒れてしまったおいちゃんの代わりに寅さんが行くことにした。
さくらは部長が勝手に押し付けた政略結婚だとして否定的だった。
オリエンタルの下請け会社の社長がさくらの実力を買い、知らずのうちに縁談話が持ち上がっていた。
寅さんはそのお見合いを封建主義だと表現していた。
お見合いが行われるホテルにタクシーで向かったが、あまりの内外装の高級さに圧倒されてしまった。
社長と対面し、ホテルの料理では音を立てる(クチャラー)寅さんを迷惑そうに見ていたさくら。
そして寅さんのユーモア話が下品を極めたので場の空気は最悪に…。
悪酔いした寅さんはおしゃべりが過ぎたことで周囲をすっかり疲弊させてしまった。
酔っ払って帰ってきた寅さんとさくら。
さくらは2階の部屋に引っ込んでしまった。
翌日、オリエンタル電気会社にいたさくらは社長との結婚を破談になったことを伝えられた。
エロ雑誌を路上売りする川又登(秋野大作)に代わって寅さんは抜群のセールストークで周囲の購買意欲を掻き立てて収益を上げていた。
家に帰ってきた寅さん。
そこで待っていたのは沈んだ顔のさくらとおいちゃんとおばちゃんの3人だった。
さくらの破談を聞かされた寅さんは開き直ったが、おいちゃんに怒鳴られた。
追い討ちをかけるようにさくらも寅さんを責めたが、寅さんは逆ギレして妹に平手打ちした。
その後、家族全員の大喧嘩に発展し、おいちゃんが涙の説教をしたことで鎮静化。
おいちゃんは心労のすえに倒れたが、命に別状はなかった。
最後は寅さんとさくらは仲直りし、笑っていた。
しかし翌日、寅さんは昨日の喧嘩を詫びつつ部屋に書き置きを残して放浪に出てしまった。
さくらと登はすぐに寅さんを追いかけたが、寅さんは船頭にオールを力一杯漕ぐよう指示。
寅さんは妹たちの呼び声にも応じず、そのまま1人旅に出て行ってしまった。
ーー冬子との再会
そして1ヶ月したある日の事…。
御前様の娘の坪内冬子(光本幸子)から一通の手紙が『とらや』へ届いた。
奈良に父親の御前様(笠智衆)を案内している最中、偶然寅さんに出会ったことを伝える手紙だった。
冬子は寅さんのことを覚えており、運命の再会を果たした。
寅さんは連れの外国人を無視して冬子と御前様に付き添うことにした。
1ヶ月が経ち、柴又に帰ることはやはりためらい、さくらの幸せを願って再び1人旅に出た。
御前様には草履履きなど身なりを改善するよう注意され、寅さんは複雑な顔を浮かべつつその場を去った。
寅さんは真面目な暮らしが苦手で、庶民に混じって生活するのは寅さんには向いていなかった。
その頃、とらやでは隣の印刷工に住む博(前田吟)がさくらに恋心を抱いており、さくらのほうも満更ではなかった様子。
その様子をおいちゃんおばちゃんは喜んだ。
おいちゃん曰く『寅がいたらすぐ(2人の関係が)壊れるな…』
そして冬子がとらやにやってきた。
その刹那、寅さんもやってきた。
その様子をおいちゃんおばちゃんは奇異の目で見ていた。(あまりに唐突だったため)
さくらは寅さんと再会を果たし、大喜びした。
その頃、寅さんは博に対して大学を卒業していないやつは妹を嫁にやれないと怒鳴っていた。
口論は続いたが、博のさくらへの強い恋心を確認し、博に対しアプローチの仕方を教えてやることに。
その後、『目にものを言わせる』という諺を例に女性に対するアプローチ法を博に一生懸命教えてあげた。
かくいう寅さんも御前様の娘、冬子さんに密かに恋を寄せていた。
翌日、寅さんは妹が勤めるオリエンタル電気会社に視察にきていたが、さくらに博の場所を問うとすぐに去って行った。
博には『脈なし』とはっきり言い、2人の関係をこじらせてしまった。
博は寅さんをのけて隣のさくらのもとに突っ走る。
そしてさくらに対する熱い思いを語り、勤務先の工場を去ることに。
さくらは帰ってきた寅さんの真意を知り、激怒。
さくらは博がいる駅のホームに行き、ともに電車の旅を過ごした…。
おいちゃんおばちゃんはまたしても寅さんに激昂し、ついに2人は『出ていけ』と口を揃えてしまった。
しかしその直後、さくらが帰宅し、博と結婚の話がまとまったことを伝え、一転して喜びに包まれた。
翌日、博とさくらの結婚式(川千家)が開かれ、厳かなシーンでも寅さんは相変わらずおちゃらけていた。
しかし喧嘩別れをしていた博の両親(志村喬)が8年ぶりに目の前に姿を見せ、さすがの寅さんもそのときばかりは沈黙していた。
そんな遠路はるばる北海道からやってきた博の両親(父親)に博は怒りを募らせていた。
博の父親はとんでもない悪人だったからだ。
せっかくの結婚式でも目線を下に落として素直に喜べなかった博。
スピーチ中、やはり博の父親は笑顔一つ見せなかった。
そして最後、新郎新婦の両親が祝辞の言葉を述べる。
その内容は寅さんの予想に反するものだった。
博の父親はスピーチ中、自分の今までの非礼を詫びて新郎新婦に対し最大限の賛辞を贈った。
博は知らずのうちに泣いていた…。
寅さんは態度を改め、博の両親に感謝の言葉を述べた。
そして結婚式は盛大な拍手と共に終えることができたのだ。
ーー初めての失恋
翌日、嫁入りしたさくらの不在を寂しがる寅さんは理由をつけて家を出た。
おいちゃんおばちゃんのぼる3人は寅さんの行き先については薄々勘づいていた。
妹のさくらがいなくなり、食べ物もろくに喉を通らないことを冬子に告白。
冬子は憂さ晴らしと言って、寅さんとモーターレースを観賞したり、飲み屋に行って気分を紛らわせていた。
寅さんは妹のさくらと同じく、自分も知らずのうちに冬子に恋していることに気づき、博の言っていた『兄貴(寅さん)には…好きな人ができたことはありますか?』という言葉を強く噛み締めたのだ。
翌日、寅さんは冬子のもとに行った。
しかしそこには見知らぬ冬子の親戚がおり、御前様にそれを問うと『冬子の嫁になる男だ。』とはっきり言われてしまい、憔悴。
その後寅さんは海岸で1人泣いていた。
とらやではおいちゃんが寅さんが失恋したことを皆に話し、桂梅太郎(太宰久雄)は寅さんの一方的な片思いであると批判していた。
寅さんは襖の奥に隠れていたが、怒ることもなく酒をちびちび嗜んでいた。
寅さんは2階の部屋に引きこもり、また1人旅に出ようとした。
さくらはそれを引き止めたが、寅さんは行くあてもなく旅に出た。
登は寅さんと一緒に付き添ったが、寅さんに自分の甘ったれた根性を罵倒され、その場を出て行った。
1年前。
冬子は結婚した。
さらに妹のさくらが子を授けていた。
寅さんは冬子にそんな出来事のすべてを感謝し、手紙を送った。
現在、寅さんは登と一緒に路上売りを頑張っていた。
〜1話終わり〜